無意識のうちに香りの中に住んでいた

2011.12.19

私は、今でこそ「香りを語る」という職業につき、客観的に香りの分析、分類をし、好みでない香りも身にまとったりしています。でも、二十代までは、無意識のうちに香りの中に住んでいました。思えば無意識というものは案外、いえ、ほとんどといっていいくらい、その人の価値観を決めているものですね。私が香りを意識し出したのは、おそらく十二、三歳ころなのではないかと思います。無意識に香りの中にいたのが、生まれたときからなのではっきりしません。

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父が化粧品会社に勤めていて、私はその転勤先で生まれました。今でこそ単身赴任という言葉もあるくらいですが、当時は家族全員が父親の転勤先に大移動をしていました。そのうえ、その会社は日本の化粧品会社のうちでもトップクラスだったにもかかわらず、昔は仕事場と家が一緒でした。ですから多少広い家だったのに、家の裏手の倉庫からいつも香りが漂ってきていたのです。生活の匂いではなくて、生活の中に入りこんでいた香りの中で育ったわけです。父はもちろんのこと、母も、私が目を覚ますと朝からすでにきちんとお化粧をして、化粧品独特の香りがしていました。また父は派手なハマつ子で、新し物好きでした。よく外国のお菓子を買ってきてくれたので、他とはちょっと変わった、甘い匂いに親しむこともできました。