女の手が美しい

2011.03.31

良いハンドクリームもUVケアクリームもない昔、水仕事、力仕事をしない女の手が美しいのは当然だった。清少納言は、初めて定子中宮のもとにお仕えした夜のことをこう書いている。「とても寒い季節なので、お袖から差し出していらっしゃる御手がちらりと見えたのが。いみじうにほひたる薄紅梅(明るく輝くような薄紅梅色)だったのは、この上もなく素晴らしく、宮人を見知らぬ里人の心地には、こんな人もこの世にはいらっしゃったのだと、目が覚めるほど見つめずにはいられなかった」(『枕草子』)中宮は数えで十七歳。薄紅梅色というのは、寒さで肌が赤らんで見えたのかもしれない。しかしそれはアカギレで傷んだ手ではなく、労働を知らない手だ。清少納言とて、米のでき方も知らぬ貴族の端くれだ。その清少紗言が驚嘆したほどの美しい手とは、いったいどれはどの雅びさだったろう。『医心方』を見ると、艶やかな肌にするために、白蜜や母乳、桃の花、牛の骨髄や酒や米といった、高価な食材を使ったクリームや丸薬が紹介されている。顔につけるついでにそうしたものを、貴族は手にもつけていたのだろうか。
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